アブ対策

アブ対策本番の季節

~昨年の芦谷川沢登りで絶大な効果を発揮したアブ対策を紹介する~

2021年8月25日

アブ・ブヨについて

山行でやっかいな奴らといえば、春先から初夏にかけての「メマトイ」と、お盆を過ぎると大量に発生する「アブ」と「ブヨ(ブユ・ブト)」の吸血昆虫たちだ。昆虫好きのロッコペリでも、これらの害が多すぎるので対策をせざるを得ない。

蚊と違ってアブ・ブヨは、のこぎり状の口吻で皮膚を切り裂き滲出する血液をなめるように摂取するため、吸血部位には小さな出血を認める。そのうえ、時間が経つごとに激しい痒みと腫れ発熱をともなう症状に1週間ほど苦しめられることになる。

そもそもアブは、二酸化炭素を放出する熱源に寄ってくる習性(後述)があるので、人は格好のエサになってしまう。

今年も全国的にアブ(シロアブ、ウシアブ、ヤマトアブ)が多いようだ。沢や山で遊んでいると、もれなくこいつの餌食になってしまう。

今回は特にアブの対策について紹介したいと思う。ちなみにその効果は絶大、あれだけ厄介な存在のアブを今年は楽しみに待っている自分が怖い。

虫よけは役にたたない⁈

虫よけ色々

アブよけ対策として、8時間持続!国内最大配合比率の文言に惹かれ、ディート※1やイカリジンが配合された虫よけを買った。ハッカ油やレモングラスなどの忌避剤も作ってみた。林業や農業の人が使っているからと一押しの、パワー森林香(虫よけ線香)もわざわざ取り寄せたりもした。

結論から言うと、虫よけは汗や水で流れるとすぐに効果は無くなるから絶えず塗布する必要があり、塗りムラがあればピンポイントで咬まれる始末だ。

また最強をうたう虫よけは、塗ると灼熱感にやられ吸い込むとむせかえってしまう。自然派に人気の、ハッカ油やハーブ系は気休めにもならない。

パワー森林香の場合は歩行中に煙が流れるので、ぶら下げて歩いている人への恩恵より、後ろを歩く人へのやぶ蚊やメマトイなどの虫よけになっていた。休憩中に風上に置いてみるも、アブは容赦なく襲ってきたので、メンバー全員が用意し、囲むように結界をつくる必要がありそうだ。ただし、全身線香臭くなる覚悟はしておいたほうがよい。

※1使用上の注意として、薬剤付着は塗装面にかなりのダメージをあたえてしまう。というのも、遡行中で着脱が面倒なのもあって、ヘルメットをかぶったまま「ムヒの虫よけ」噴霧したら、薬剤が付着した部分の塗装がドロリと剥離してしまったのだ。こんなものを人体につかって大丈夫なのか、少し心配になってしまうくらいだ。

オニヤンマ君の効果は懐疑的

出典:サンライン オニヤンマ君 1320円税込

こちらのオニヤンマ君も「アブ除けに良い」と、ネットでバカ売れしている商品だが、本当の効果のほどは分からない気休めレビューが大半。実際に着けていた知人も、「ん~、咬まれるのは減ったかな?」といった程度で懐疑的だ。最近では蚊よけにも効くとの話もあり、ロッコペリとしてはこの手の虫よけグッズは信用していない。

またこの商品は天敵を模しているとの事だが、エサであるアブが毎年大量に発生しているのに、沢で大量のオニヤンマを見かけないのはなぜだろう。

そもそもアブは、色や形に関係なく熱もしくは二酸化炭素を発生するものに取付く習性をもっている。畜産農家では、アブに牛などが咬まれることが原因でかゆみのストレスになり、搾乳量が減ってしまう大きな問題をかかえており、その対策として「アブキャップ」という商品が推奨されているくらいだ。

アブが多く発生する沢やキャンプ場などで、このオニヤンマ君が1個で良いのか何個もいるのか、トラロープで代用できるのか、オニヤンマの写真ではどうなのか等、ぜひ皆さんのリアルな検証レポを期待したい。

攻めのアブ対策

ロッコペリは、沢遊びをするたびにイライラ度を招く上記のパッシブなアブ対策はやめにして、アクティブな対策に転じてみた。

そいつは100均などで売っているバドミントンラケットで打ち落とすという単純なもの。名付けて「アブラケット」と呼んでいる。

他にもハエたたきを用意したが、打ち落とす面積が狭いので役には立たなかった。

アブラケットを使った結果として効果は上々、アブに対してはほぼ完勝(一日で24匹撃墜1引分け)だった。欠点として、山や沢に持っていくのに邪魔だし勇気がいるのが難点だろう。

次にアブが獲物に取付くまでの動きを見ていこう。

アブの特性

よく観察すると、アブが獲物に取付くまでには独特の飛行パターンがあることが分かった。

また、アブは意外にスタミナが無いことも分かっている。

これは、アブをタオルなどで追い払っていると、一瞬姿を消すのでその方向を調べると、驚いたことに葉の裏で30秒ほどじっと休憩しているのだ。

もちろん、葉っぱごとラケットで叩き落すようにすれば簡単に駆除できるし、歩行中ならそのすきにアブから余裕で逃げ切れるだろう。

アブの飛行パターンは次の通り

  1. 歩行中、アブに狙われている人を観察すると、アブはターゲットの全周をぐるぐる回るように飛行している。これは、後述するが、目立たない陰の部分や視野から隠れた部分を確認しているものと思われる。
  2. 取付けそうな位置を見つけると、全周飛行から往復飛行に移り初めは大きく振幅をとるが、やがて振幅は小さくなり、狙いの位置にピタリと張り付く。アブラケットで打ち落とすのは、小さく振幅を取り始めるタイミングだ。ラケット面は広いので、大振りせず手首のスナップを効かせるようにすれば面白いようにヒットする。右利きの人なら、アブが左から右に飛んでくるタイミングがやりやすい。
  3. アブが口吻を差し込むまでの時間は約3秒ほど。わざととまらせて、咬まれる前にラケットで軽く叩くのも効果的だ。ちなみに、アブは蜂などの針とちがい吸血以外に口吻を使わないので、手で握っても刺されることは無い。

アブはどのように位置決めをするのか

アブは、色や形に関係なく主に二酸化炭素と熱を発するものならなんでも狙ってくる。例えそれが車やバイク、焚火や炎でもだ。いわゆる「飛んで火にいる夏の虫」なのだ。しかし、アブの場合はそればかりではないようだ。

咬まれまくった経験上、アブは視界の届く範囲内では咬むことはない。例えば、前腕の場合だと視界の届かない小指(尺骨)側の範囲がやられる。足なども、ひざ下やもも裏、くるぶしやふくらはぎがほとんどで、これも歩行中は視野から死角となる部分だ。

ここからは、ロッコペリの全くの想像での話になるが、前記の全周飛行のさいに動物の「眼」の位置を確認しているのではないかと思う。眼の位置が分かれば、そこから遠い所を狙えば効果的となるからだ。

これは以前畜産農家から聞いた話だが「アブは耳の後ろや後ろ足、陰部を狙らい、牛もイライラしていきなり暴走したりする」との内容からも、アブは死角を分かって狙っているふしがある。

生物にとって、目は個体の末端にあって対をなす丸い物体だから遠目でも顔と認識することが出来る。アブは効果的に吸血するために、進化の過程で動物の死角に入る習性を見つけたのではないかと想像する。

そこでアブが「眼」を認識すると仮定するなら、背面にもにらみを利かせれば習性を混乱させられるのではないかと思いこんな物を作ってみた。

どうせならと古代エジプト神のメジェド様においでいただいた。「メジェド」とは、古代エジプトにおいて「打ち倒す者」という意味もあるので、実験をするのに正にうってつけなキャラクターなのだ。

実際に山行で使用

ザックの後にぶら下げてみたが、季節はもうアブが少ない頃だったので実際の効果の評価は出来なかった。ただ、後続のメンバーからは「常に見られているようで落ち着かなかった」との反応だったので、次回の夏にも検証したい。

効果が実証できればアブが狙いそうなところに、手芸のぬいぐるみに使う目玉ボタンを配置出来れば更にアブ除けになると考えている。そのうち、ウェアのメーカーが昆虫の擬態のように目玉を模したデザインを取り入れてくれるかもしれない。

結論

結論として、キャンプやガーデニングと違って、活動量の多い沢遊びや山行では薬剤に頼らず積極的にアブを落とすしかない。昨年はその効果をみて、仲間がこぞってバドミントンのラケットを買い求めたほどだ。中には、携行性を考えてミニバドミントンの短いラケットを用意した強者もいる。

ただ、アブ以外のブヨなどの吸血性の昆虫からも体を守る必要があるので、しばらくは「虫よけ+アブラケット」の併用がよさそうだ。

追記:逢山峡のブログにもアブとの攻防をのせています

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