ルートファインディングの必要性

低山の六甲山系で読図は不要?!

~すぐにできる読図と簡単な練習方法~

2020年12月16日

コロナ禍の影響か、三密をさけて運動不足とストレス解消になるからと登山をする人が増えている。「ソロキャンプ」という新語から分かるように、空前のアウトドアブームが来ているのは間違いない。ロッコペリも、掬星台で今までに経験したことがないくらいの人出に遭遇しびっくりしたことがある。

兵庫県内での山岳遭難は、直近の5年間を見ても毎年100人を超している。そのうちの、約4割が六甲山系で発生しているから驚きだ。

特に、2020年は10月の時点で、神戸市消防局が救助した登山客は96人と過去20年で最多となっている。また、そのほとんどが六甲山系で発生とある。

遭難の内訳をみても、3割にあたる29人が道迷い、ほぼ3割の26人が転倒・転落と続いている。

現代はスマホで必要な情報がすぐに手に入る時代、なんだかその辺りに大きな落とし穴があるのではと、ロッコペリは考えている。

地図とコンパスとGPS

エアリアマップ(登山地図)の代表といえば「山と高原地図」だろう。主要なハイキングコースが赤線で案内され、ルートの起点、所要時間や見所または分岐や危険個所など、実地調査に基づく詳細な地図となっている。

これから、登山を始める方は必携の地図なのでぜひ準備をし、できるなら事前に行こうとするルートの机上登山をクセ付けてほしいと思う。

さて、ここからが本題。

「山に登るなら、地図とコンパスは必携よ!」と、このフレーズはお題目のように誰もが知っている。

しかし、現実はどうだろうか。ハイキングに行くのに、地図はまだしもコンパスをもっている方などいるのだろうか?

なかには「何かのお守りよ!」とうそぶき、コンパスはいつも持っているが使い方が分からないというベテランハイカーを過去に何人も見てきた。

迷ってからでは遅い

道迷いのほとんどが、現在地を見失うところから始まっており、迷ってから地図を広げたのではもう遅い。その時点ですでに「遭難」していることになる。

「今どのあたりなんでしょうか?」と、地図を広げて尋ねられることも道迷いあるあるだ。

また、GPSアプリを持っているのにも関わらず、「磁気センサーのキャリブレーション※1」を怠り、方角を示す矢印がでたらめになって迷った例や、事前に「地図データのキャッシュ※2」を忘れたため地図が表示されなかった例などもある。

最新機器も、使い方を怠ると全く役に立たないばかりか遭難を助長してしまうことも。

  • ※1:スマホを大きく8の字を描くように回すと補正される。ハイキング途中にも行うと良い。
  • ※2:スマホの電波が入るところでルートを見やすい縮尺で表示させるだけ。アプリが自動で地図記憶(キャッシュ)してくれる。

ルートファインディングの基礎練習をやってみよう

1.まず知ったルートで練習する

使用するコンパスは、SILVAやSUNTOといったプレート型のものでなくてもよい。ネットなどにある写真のような小型のオイルコンパスで十分役にたつ。腕時計に付けられたものや、キーホルダー型のものなど好みに合わせて選ぶとよいだろう。

どのコンパスも同じだが、使用のさいは自身の胸前で水平に保持することが基本となる。

そして練習は、よく知っているコースを選ぶこと。GPSを使わなくても、迷うことがないので安心して行える。

出典:https://store.shopping.yahoo.co.jp/imanando/s27-s20-s10.html#

2.練習するエリアを準備する

練習は、あまり広いエリアで行うと疲れるので限られた範囲で行うのがよい。慣れてくれば、範囲を広げて練習しよう。

まずは「山と高原地図」などの登山地図をコピーする。そして、赤線の進路が変化する地点に印をつけていく。できるだけ、細かい方がいい練習になるので多すぎるくらいがちょうどいい。

下の地図は登山地図ではないが、地形図へ同じように赤線を入れ印をつけておいた。例として、摩耶山から黒岩尾根の606ピークまでを選んでみた。

3.細かいルールは無視する

ピークやコル、等高線の間隔などルートファインディングのさいに必要なルールは、この練習では必要ない。とにかく、練習ではコンパスの針の示す方角と、実際に歩く道の方角が一致すればいいだけ。

練習は次のように行っていく。楽しみながら、確実にコンパスと変化する方角の感覚をつかんでほしい。

  1. A~B:A地点を出発する。進路は北北西へ。
  2. B~C:B地点で進路は西へ、その後西北西に進む。
  3. C~D:C地点から進路は西南西へ。しばらく進む。
  4. D~E:D地点から進路は西へ。
  5. E~F:E地点から進路は西北西へ。
  6. F~G:F地点で大きく進路が南西に変化する。分岐あり。道迷い注意地点。

・・・といった具合で、これを繰り返してRの606ピークまで実際に歩いてみる。変化する地点の方角は、予め地図に書き込んでおくと分かりやすい。

そして、地形図はカーナビのように現在地を手前、進行方向が上にくるように、つねにクルクルと回しながら進むとよい。地図と風景(地形)が一致しているので、ルートファインディングがやりやすくなる。

さらなるステップアップ

コンパスの感覚がつかめたら、次は読図に挑戦してみよう。読図については、当サイトの読図を楽しむを参考にしていただければ幸いだ。

登山地図から地形図にステップアップし、読図が出来るようになると楽しめる山域がぐっと広がるのは間違いない。ただ、地図と実際の風景や距離感は、繰り返しの練習のなかから体感するほか近道はないので、ある程度は時間が必要なのは覚悟してほしい。

まとめ

六甲山系ならどんなに迷っても、とにかく尾根を登っていけば2時間もあればしっかりとした踏み跡が見つかるもの。だからといって、読図やルートファインディングは不要かと問われればロッコペリは「必要」と答える。

しょせん登山は自己完結であって、他人に頼らないのが基本だから。例えグループ登山であっても、それは同じことと思う。

低山だからとナメてかかると、牙をむくのも六甲山系であることを忘れないでほしい。登山する人は、常に臆病者であるほうかいいのだ。

その遭難という恐怖から自身を守るためにも、普段からルートファインディング&読図をする癖をつけてほしいと、ロッコペリはを切に願っている。

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