遭難予防の読図

遭難事例を通して机上登山を行う

~疑似体験による遭難予防~

2021年1月21日

原因と結果

ロッコペリの蔵書にヤマケイ文庫のものが多くなって久しい。その中でも、遭難や救助に関するものも多くある。

普段バリエーションルートを好んで歩くものとして、遭難と救助はあってはならないが常に背中合わせという危機感がある。先日書いた、「ルートファインディングの必要性」なども、その中から出てきたものだ。

元々大型産業機械のメンテナンスに携わる仕事を長年してきたロッコペリは、トラブルシューティングについても嫌というほど経験してきた。いわゆる「原因があって結果がある」というやつ。

「人間は必ずミスをする生きもの、トラブルの原因を人に求めてはいけない」が、メカニックの原則の1つだった。つまり、人がミスをする構造のほうが問題という事で、徹底的に原因を分析し対策を行った。

登山での遭難も全く同じで、そこに至るまでにはヒヤリハットなど多くの原因が存在する。ただ、登山の場合は山に対策を施すにも限界がある。ならば、登山者自身が色々な事例を通して疑似体験をし、少しでも未然に遭難を防ぐことが出来ればと考えている。

机上登山のススメ

ドキュメンタリーの記事なり本を読む際は、地形図に時系列的に書き込みをしながら読み進めるのが良いと思う。「へ~、そうなんだ」ではもったいない。事実、生還したから記録に残っているのであって、その軌跡をたどることでまるで自分がその場にいるかのように再現できるのだ。

今のロッコペリからは決して見ることのない山域とその世界だが、こうして地形図に軌跡をプロットしていくと遭難者の心理状態や地形の状況と遭難にいたるその原因などがリアルに再現できる。

書籍からは、ロッコペリよりはるかに登山経験も豊富で知識もあろうかと思われるかたが、認知のバイアスによっていとも簡単に道迷い時の原則を破ってしまことが書かれている。ベテランなら読図の先読みで、異常を察知できるものと思っていたがどうやら人間はそのようには出来ていないらしい。

そして、遭難者の多くは百名山に代表される、いわゆる整備された登山道で道迷い・遭難をおこしている。

余談になるが、以前100名山のうち78座を登頂した壮年と偶然お会いしたことがある。ちょうどロッコペリが読図の練習に出かける時だ。彼曰く、今まで読図をしなくてもメジャーな山は案内が充実していて困らなかったとのこと。その言葉に、正直驚いたことを記憶している。

だんだんと机上での読図が上達してくると、等高線の微妙なカーブが見えてくるもの。例えば、登りでは意識しないような枝尾根が下りでは道迷いにつながる事もある。予め「この辺りにはニセトレースがついている可能性がある」と読図して実際に歩くのと、漫然と歩くのでは雲泥の差があると思う。

登山は自己責任といわれるが、責任を果たすためにはそれ相応の修練が必要だ。ロッコペリのブログを読んでいただける読者には、生還した記録を反面教師として、ぜひ安全登山への意識を高めてほしいと思う。

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