シェール道整備

霧中のシェール道整備

~雨天でしか味わえない自然の芸術を楽しみつつ登山道整備を行う~

2021年8月22日

雨天を憂鬱だとか気分が落ち込むと嫌う方も多いが、ロッコペリは雨中登山が大好きなのだ。幽玄の世界にひたれるというか、水墨画の世界にどっぷり浸かれるのを気に入っている。

自然界に目を向けると、天の恵みとはよく言ったもので森の木々や苔などがつやつやと輝き、生命に満ち溢れている。誰もいない山中に目を閉じポツンと一人たたずむと、風の音や雨垂れの音、樹々の葉が揺れる音などが頭の中を通っていく。この一匹の動物として感覚している瞬間がたまらない。

今回はいつも一緒に整備を手伝ってくれている知人を誘い、先日の山行の下山時に気になった穂高湖堰堤から獺池分岐までの整備を行うことにした。


今日は体力仕事であることと、知人の膝の状態が良くないので登りは摩耶ビューラインを使う前提で出発した。10時始発のケーブルカーには余裕で間に合うので、のんびりと歩いていく。

摩耶山は標高400m付近から分厚い雲に覆われている。杣谷川の水量もまずまずだ。

考えてみると、登りで摩耶ビューラインを使うのは初めてだった。なんとなく、お上りさん気分でウキウキしてしまう。整備用の階段を使ってみたい衝動に駆られる。

乗客は20名程度、ほとんどが高齢者のハイカーだ。

ちなみに、ケーブルカーが電車のようにポイント切り替えも無いのに、脱線やぶつからずにすれ違える仕組みはご存じだろうか。目から鱗が落ちるような単純なからくりで行われているのだ。

掬星台はご覧の通りいい雰囲気の霧に包まれている。ロープウェイでは高齢者ハイカーの行儀の悪さに不愉快なことがあったが、気持ちも落ち着きシェール道を目指していく。

霧の中の天上寺も、古刹のいい雰囲気を醸し出している。

霧中登山のお目当ての一つ、蜘蛛の巣についた水滴を撮影すること。微風でも揺れてしまう蜘蛛の巣を撮るのは、なかなか骨が折れる。

どれ一つとっても同じものがない蜘蛛の巣の芸術を、無心になって撮影する。これもまた、日ごろの色々なストレスを忘れさせてくれる大切な時間だ。

見上げると、葉巻虫の仕業か器用に葉が巻かれている。オトシブミやチョッキリなど、多様な生き物が複雑に絡み合って生きている自然界は本当に素晴らしいと思う。

穂高湖堰堤

これだけ霧が濃いと、堰堤と言う人工物も流れ落ちる水音と相まって、いい雰囲気に変えてくれている。

手始めに東屋から進んですぐの倒木を処理していく。

今回は新しくポケットソー(手動チェーンソー)を投入する。もともとは苔のルンゼの整備用に購入したが、タイミングが合わずなかなか出番がなかった。往復で大径の木もガシガシ切れるが、コツをつかむまでは少々腕力がいる。

雨が上がるとすぐにシロアブが襲ってくる。今回は足にとまった所を手袋で落としたが、アブの対策はこちらに書いてあるので参考にしていただければと思う。

倒れていた山椒の樹からは、量は少ないが実山椒がとれた。つくだ煮にすれば立派なご飯の友になる。

いずれ枯死して落下するであろう倒木も予防で処理していく。

六甲山牧場方面に続く道から分かれ、生田川の本流へと下っていく。この後の徒渉地点は、ほぼ水没していてドボンを覚悟で渡っていく。

進んでその先、カワウソ谷と生田川の合流する少し上流の地点に、本日処理したかった倒木がある。ここは、八洲嶺第三堰堤内の堆積地になっており、倒木のせいで足場の悪い砂州を迂回しなければならない。特に、雨が降ると迂回路は泥濘となり厄介になる。

まずは手のこで、径の細い部分を処理していき、幹の太い部分はポケットソーで運べる大きさに切っていく。

倒木の根は浅く、スコップで根起こしする必要もなかったので、そのまま斜面から引きずり落とした。油脂の多い松や杉と違って切りやすく、思いのほか早く作業が終わってしまった。

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