摩耶東谷右俣

岩塊中央から右手に目をやると、斜度のやや緩い斜面が見える。といっても堆積土砂の急斜面を、フリーでトラバースすることはできない。取付きで装備を装着しておかなかったことが悔やまれる。

腹を決め、徐々に斜度がきつくなる岩塊をよじ登っていく。

左手の岩壁ほどではないが、それに近い斜度を登っている。そして、先ほどからここの植生に違和感を感じている。

不思議なことに何本かの木は、斜面に対しほぼ水平に近い角度で生えているのだ。普通なら「J」の字に曲がるものだが、それよりも先に大雨で根元の土砂が流されるためだろうと想像する。

そんな根無し草のような状態だから、体重をかけて岩板ごと崩落しないか見極めつつ登っていく。

水平に生えた立ち木の根に立って先を観察する。真上の岩塊はこのまま直登するか、右手にある4本の木から巻いていくかを考える。

今日もスパイク足袋を履いているが、軟斜面では絶大なフリクションを得るこいつも、岩ではまるで役にたたない。フリーでこの岩塊を登るのは危険と判断し、右手に進路を取ることにする。

ここから4本の木までが遠かった。

木の上に出たはいいが、さらに岩場が出現し少し進んでみるもここで完全に詰まってしまった。クライムダウンのあと、不安定な木の根の上で装備を装着するのはとても大変だった。

その後、Gハンマーで安定を確保しながら20mロープでバックアップ、土砂の堆積した急斜面をトラバースした。

岩塊を巻いてトラバースするまで、なんと40分もかかってしまった。

滑落防止のため、木から木へしゃくとり虫方式でロープをかけ替えながら登るので時間がかかる。

グズグズの岩場や、岩に腰掛けたかのような造形を見ながらスカイラインが見える地点まで登ってきた。ここにきて、堆積土砂に苦しめられる。乾燥しているので崩落しやすく、粉塵が舞い目やのどに飛び込んでくる。

Gハンマーを打ち込みながらがむしゃらに登っていく。途中棚になっている地点でほっと一息つき、コバノミツバツツジが藪になっている地点を登っていく。

すぐに藪をぬけ、明確なけもの道に出会いホッとする。後は、適当に稜線を目指して進むだけだ。

飛び出たところに特徴的な枯れ木があった。その先に踏み跡がしっかりあったので、進むとすぐに山寺尾根西尾根に合流した。

これで脱出口が、典型的なニセトレース部分だったあることが分かる。下山時に多くの人が迷い込んだのだろう。幸いなことに、枯れ木の先は道がないので間違いにすぐ気が付ける。

あとは、ハイキング気分で掬星台を目指すだけ。

同一犯の仕業。見通せる限り落書きのように赤ペンキで印をしている。マーキングは、道の分岐や道迷いなど危険な場所へ効果的に行ってほしいと思う。

13時過ぎ、旧天上寺への分岐点。ここに来て、お腹が減りすぎて掬星台に登る気力が無くなった。予定を変更し、東谷を下ることにする。

水平路を西進し水路(床固工群)脇を下っていく。

マザーツリーの下、岩クズを下るが浮石が多く不安定になっている。振り向き撮影。

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