苔のルンゼ再生2と遭難救助

D4は右岸小ルンゼから尾根にのって袖天端をさらに髙巻いていく。木ノ袋大滝を巻くには、滝横の70度近い壁を登るか、Ⅾ5左岸から巻く2ルートしかない。

先週案内頂いたこのルートは、Ⅾ4と木ノ袋大滝を同時に巻いて、苔のルンゼに直行できるショートカットルート。Nさんが試登を繰り返し見つけてくれたものだ。

尾根の軟斜面の急登を続けると、最初のマーキング(黄テープ2重巻き)がある。ここから転進し斜上しながらトラバースを続け、北側の尾根に乗り替える。右手は、切れ落ちた崖なので細心の注意を払いたい。

振り返ると木ノ袋谷北尾根のテーブル岩が目に飛び込んでくる。テーブル岩には、Ⅾ4左岸の袖天端から直登するのも基部の様子が楽しめていい。

2つ目のマーキング(黄テープ1重巻き)が見えたら下り気味にトラバースしていく。すでに、水音が右手から聞こえている。

マーキングからすぐ、大滝上流の初めのチョックストーン滝が眼下に見えてくる。そのまま素直に下降を続けると、苔のルンゼ下の河原に安全に降り立つことが出来る。

時間は正午前、おにぎりを頬張りながら作戦を練っていく。アンカーはやはり、ルンゼ左岸の立ち木に求めるしかないようだ。

頭を下げて、ガッチリ噛みこんだ根っこを起こしてみる。まずは試し引きから。全体重をかけてけん引するも、全く微動だにしない。1mmも動かないのだ。

折角しんどい思いをして担ぎ上げたシステムなのに、流石にこれにはまいった。やはり、上流側に堆積した土砂や岩石を取り除かなければダメなようだ。

1時間ほどかけて土砂や岩石などを取り除き、邪魔な側根も切除した結果、ようやく少し動きが出てきた。根っこの下流側は谷が開口しているので、ある程度いくとごっそり抜けるはず。引いては戻すの、地味な作業をくりかえす。

4倍力は引っ張る距離も4倍、10cm動かすのに40cm必要。狭いルンゼでは下がることが出来ないので、アッセンダーを使用しスリングを体にかけて小刻みににけん引した。

ようやく全体が浮いたところで、落下に巻き込まれないよう上流側に回り込んで蹴落とす準備をする。

根っこはかなり重いが、反動をつけて蹴落とした。ただ落下先にザックがあるのが分かった時は、正直あせった。幸い根っこは逸れて止まってくれたが、もし直撃していたら、新しスマホが破壊されてたかもしれない。

見上げた苔のルンゼはスッキリと見違えるようになった。後は、雨が堆積した土砂を流してくれれば、来年の梅雨時期には緑のルンゼが復活しているだろう。

撤収もそれなりに時間がかかる。出来るだけ装備の泥は流しておきたいので、せっせと洗っていく。

予定の14時30分には下山開始、尾根を巻いて下りⅮ6へ向かう。Ⅾ5左岸は崩落しているので、根っこを頼りに降りれなくもないが、先週には気が付かなかった崩落予備軍の岩が頭上に待機しているのが分かった。

落下線上から出来るだけ離れ、ロープで軟斜面を刺激しないようソロリと下っていく。20mロープが丁度一杯の高さだった。

倒木の巣をくぐると、右岸に木ノ袋大滝が見えてくる。今日はお湿り程度の滝身だが、イワタバコが群生しているのでシーズンには見事な光景になるだろう。

下山ではⅮ4左岸、Ⅾ3・Ⅾ2右岸、Ⅾ1左岸と巻いていく。

出会いまでの下りも、登りとほぼ同じ時間。いかに登りでのショートカットルートが、時間的に有効かがよくわかる。

ロッコペリはこの山域の場合、装備の解除はここでは行わず、水場のある杣谷道登山口でと決めているのでそのまま下っていく。

順調に下っていると、摩耶第二堰堤付近の露岩部で不思議な動きをするハイカーに遭遇。ヘリの進入ですぐに遭難と分かった。その時の顛末記は後述するが、無事に救出されたのは本当に良かった。

今日は、色々な出来事があった長い一日だった。

アドレナリンのせいか、頭も体もいつもに増して興奮しているのが分かる。登山口で装備を整頓し、クタクタになった体でアスファルトの坂を下っていくが、日没を迎えた摩耶山の夕焼けがやけに気になった。

いつもは烏の行水のロッコペリだが、今日は長湯を決め込んでふじ温泉の暖簾をくぐった。

合計距離: 5.15 km
最高点の標高: 542 m
最低点の標高: 115 m
累積標高(上り): 484 m
累積標高(下り): -574 m
総所要時間: 08:04:41
Download file: 20211010_苔のルンゼ.gpx

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