梵天滝と地底探検

登ったはいいが、支点の回収も一苦労する。ベロのような大スラブをクライムダウンして崖に取付き、支点を回収したあと、再び大スラブを登ることになるからだ。

お目当てのササユリは、三段目の左岸の途中に咲いている。写真は去年のものだが、季節がおかしい今年はどうだろうか?

今年のササユリは、残念ながらつぼみ固しで咲いていなかった。しかし、枯れることなく崖っぷちでけなげに頑張るササユリに会えただけでも良しとしよう。

今年は安全最優先でということで、ランニングビレイをセットしJ先生を下からバックアップする。

先に上がったJ先生に確保してもらい、無事に3段目もクリア。ここは落ちたら確実に怪我では済まないので慎重に。

梵天滝の下にデポしたザックを回収するために、まき道を下っていく。沢で強いフェルト靴も、落ち葉の堆積した道やザレた道ではグリップが全く効かない。やはり万能なのはワラジということか。

ここで、ロッコペリ初の痛恨のミスを犯してしまう。なんと昼食を忘れて来たのだ。J先生にご馳走する冷菓に気を取られて、用意していた昼食一式を置いてきたのだ。幸いにも、J先生がバナナとイチジクのジャムのサンドイッチを2人分用意して頂いていたので、なんとか昼食にありつけた。

去年立坑に潜ったさい、下から結構な空気の流れがあったので、今年はその吸気口と思しき横坑から調べてみようということになった。横坑はコウモリの住みかになっており、中腰で奥へと進んで行く。

入り口付近の足元は、泥濘とコウモリの糞で鳥肌ものだった。20mほど進むと、砂利道になり坑道は左折、すぐにズリの流れ込む状態でほぼ塞がっていた。コウモリが一匹、ズリのすき間から奥へ逃げて行った。

現場の状態から、ここにトロッコがありズリを排出していたものと思われる。戻りも中腰なので、まあまあきつかった。本当は、ここで狼煙を焚き、立坑から煙がでればつながっていると確信できたが無理のようだ。

梵天滝のまき道へ復帰するのも、正規の道では遠回りなので、横坑そばの急斜面を直登することに。J先生のロープ30mと、これから使う50mロープを背負っての直登はなかなか骨が折れる。

梵天滝を巻き上がって道なりに進むと、本日2つ目の目的の坑道がぽっかりと口を開けて待っている。入り口に立つと、すでに冷気が噴き出ているので天然のクーラーになっている。去年の様子はこちら

入り口にはトロッコのレール跡があるが、すぐに崩落し奈落の底へと立坑が続いている。さあ、気合を入れて行こう!

およそ70年前に閉山となっているが、気温が低いためか、支保工の足場の木も腐らず生木のようにしっかりとしている。足場に支点を構築し、繰り返しの安全確認のあと、いよいよ下降を開始していく。リアル川口浩探検隊だが、カメラは先に入っていない。

今回は、50mいっぱいまで潜っての探索なので、かなり気合が入っている。立坑だけど、下から新鮮な冷気が吹きあがってくるので、ガスや窒息の心配はない。

序盤は支保工の足場はあるが、途中からは足場も無くなり、完全な空中懸垂で降りていく。壁面はしっとりと濡れているが、意外にもぬめりはない。光が届かず、気温が15度前後と低いのでコケ類の生育が無いためだろう。

最初のテラスに到着。「J先生!どうぞ~!!」の掛け声に、「待ってっても寒いわぁ~」の返事。更に、狭い立坑を空中懸垂で下降しながらも撮影するとは、山岳カメラマン顔負けの根性だ。

さらに潜ると、「昭和に入ってから、電気設備が敷設された」と、記録にあったがこれがそうなのだろう。上が電気用の碍子(がいし)で、下は通信用かな?

ただ、ここは滅茶苦茶狭く、体をよじりながら下降していかなければならない。閉所恐怖症なら、大声で叫びたくなる。

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