ロッコペリは過去に何度か救助を行っているが、今回のようにレスキュー隊の救出作業を目の前で見るのは初めてのこと。それを、ネットで紹介することは、決してスクープ記事とか名聞を求めるものでは無いことを予めお伝えしておきたい。また、不適切は表現があるやもしれないが、素人の表現としてご容赦願いたい。その上で今回は、ロッコペリの主観と現場での事実のみを記録していく。
また、今回のロッコペリの行動は、救命講習を受けた際に「レスキュー隊や救急救命士が到着するまでに、応急処置や蘇生術を行うことでケガの回復や生存率が高まる。臆することなく行動してほしい」との指導に基づいている。
15時30分、下山中摩耶第二砂防堰堤の上部巻き道で、ハイカー①に遭遇。2名とも懐中電灯を持ち、なにやら不審な動きをしていたがそのまま挨拶をして通過。
直後、ハイカー②が堰堤の立ち入り禁止バリケードを乗り越え天端を水通しに向かっている。手にはスマホを持っているので、珍しい物でも撮影するのだろうと思った瞬間、救難ヘリが爆音とともに下流から姿を現した。
すぐに、近くで遭難が起きていることを悟り、ハイカー①の所までもどって事情を尋ねると、露岩直下10mの崖下に女性が滑落、腕を骨折して動けないでいるとの事。ここで懐中電灯、スマホ(LED点燈)はヘリに遭難位置を伝えていたことが分かった。
ハイカー①の話では、長峰霊園、杣谷峠両方から到着時間は分からないがすでにレスキュー隊が向かっているとの事。ヘリは上空でホバリングしたまま降下地点を探っていたが、見いだせないのか旋回に入っている。恐らく地上部隊と連絡をとっているものと思われる。
滑落停止している女性を現認したので、進入路を決めすぐに応急処置に向かうことにする。ハイカー①からは、レスキュー隊を待った方がいいとの意見もでたが、幸いフル装備の上、この辺りは露岩の下で石英脈を探索したので地理には詳しい。何より、救命率を上げるのが先決だ。
ましてや、不安定な崖下に一人でレスキュー隊を待つのは心細いだろう。さらに、骨折によるショック症状やコンパートメント症候群にも留意したい。
要救助者の女性に近づくと、意識ははっきりとしている。骨折の自覚はあるが、痛みをあまり感じないし指先がしびれているとの事で、危険なサインがでている。服の上からでも大きくはれ上がった左上腕が確認できる。
とにかく声を掛け続ける。左腕以外の手足も動き、幸い頭も打った様子はない。年齢、今日は何月など質問にも明確に返答。今のところショック症状はでていない。
すぐに、三角巾による応急処置をすることを伝え手持ちのスポーツタオルにて腕を保持する。
骨折部位は、枯れ木の副木による固定を試みるも折れてしまい役に立たない。コンパートメント症候群も考慮し、左上腕は三角巾の上から体に伸縮性テープで緩く固定するにとどめた。
上空ではヘリが、何度がホバリングで接近を繰り返すのでダウンウォッシュによる、落ち葉や木くずの巻き上げが起こり、要救助者の周りは嵐のような状態に。
ジャケットを着ていれば、風よけに要救助者の上半身を覆うこともできたが、ロッコペリの体で防ぐしかない。ドロドロで汗臭い体で申し訳ないと断り、とにかく風よけになった。目を閉じていても、鼻や耳には容赦なく粉塵が入ってくる。
ヘリが離れ、処置が終わったタイミングで、レスキュー隊①が現着。すぐに血圧測定を行うリーダーの方に、状況を引き継いだ。
ここから、ロッコペリがすることは何もない。
また進入路側に、要救助者とレスキュー隊がいるので、現場を動くこともできない。不謹慎だが、そのせいでレスキュー隊の遭難救助の現場を目の前で見られたことは、今後の登山の在り方に少なからず影響を与えた。
レスキュー隊②③の別働隊なのか、ヘリからの降下された方なのかは分からないが、数名のレスキュー隊がロール状に巻いたストレッチャーを持って河原から上がって来た。
レスキュー隊①と合流後は、急斜面のため、支点の確保から要救助者のストレッチャーへの移動など、困難を極めながらも隊員どうして声掛けをしつつ確実に作業を行っていた。日ごろいかに訓練を積んでいるかが垣間見える。
作業中、杣谷峠からのレスキュー隊②が到着。一部隊員が救助作業中の様子を直上から確認しようとして、小規模の落石を発生させてしまったが、特に被害はでなかった。レスキュー隊②の中に、現場で作業中の隊員の上司がおられるようで、指示と確認が交わされている。結局、指揮権を現場隊員に任せ回り込んでピックアップ地点に向かうようだ。
すぐにレスキュー隊③が救急救命士と一緒に到着。
ここで2回目の落石が発生。今度も直上で救急救命士が同じように覗き込んだ時に、大き目の落石となった。1回目は小石程度だったが、2回目はグレープフルーツかメロンくらいの大きさの落石。
「ラーーク!!!」の声に、現場のリーダーが瞬時に反応し、ストレッチャーへ収納しようとしている要救助者の、真上に落下してくる石を体を張って受け止めていた。わが身の危険を顧みず、落石を腹に抱えるように両手でキャッチし、要救助者の盾になった姿には心底感動した。
思わず「進入路はあっちです!」と、ロッコペリも大声を出してしまった。
そうこうしてると、電波の届く位置まで行ってレスキュー要請していた、要救助者のご主人と言う方が降りてこらた。リーダーからこの後の説明を受けていた。
依然現場は騒然となっていたが、準備もできたようで「痛いけど少しだけ我慢してください。どうしても耐えられないときは言ってください。今から6m、約3分で河原に降ろします」と伝え降下開始。要救助者にとってミノムシのような状態で降ろされる不安を、隊員がストレッチャーを抱えるように付き添い、終始声を掛け気遣っておられた。
要救助者も無事に河原に降ろされ、ヘリでピックアップの準備に入った。
そして河原の隊員から「救命士一名お願いしまーす」との声に、若い救命士がロープを使って急斜面下っていくが、レスキュー隊のような慎重さは見られず嬉々として斜面を蹴散らす姿にはすごく違和感があった。
幸い河原の下降点には誰もいないので、そばのレスキュー隊員も「おいおい・・」と困惑気味。
処置が終わり、いざピックアップポイントに運ぼうとしたら「すいませーん!体温測り忘れてましたー」と救命士の声・・。
進入路も空いたので、ロッコペリもご主人と一緒に登山道に復帰。
当初レスキュー隊との打ち合わせで、日没まであと1時間も無いので地理に明るいロッコペリがご主人と同伴して下山予定だったが、レスキュー隊も分かれて下山するとのことで、ご主人はお任せすることになった。
ご主人いわく、登山を始めてまだ間がないようで「今日は初めてのストックを使っての下山。妻が露岩を越えたところでストックを着いたとたん、一瞬で姿を消した」と、事故の詳細を教えてくれた。「ストックを使った下山が間違いだったのでしょうか?」と、問われたのでストックを使用する際のメリットデメリット、潜む危険性など説明差し上げた。
奥様を収容したヘリが、上空でしばらく旋回していたが、収容先の病院が決まらなかったのだろう。しかしそれもつかの間、あっと言う間に飛び去って行った。
最後にご主人へ「お大事になさってください。」と、挨拶しロッコペリ単独で下山した。
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