現在地を知る方法
現在地の確認は、登山口に立った時から始まります。
登山中も常に位置確認とルートの先読みを行い、現在地をロストしないようにしなければなりません。ルートから外れ、現在地をロストするという事は「遭難」を意味します。そうなると、現在地が分かっていた地点まで戻るかGPS機器に頼るほかありません。
特に道迷いは、見通しのきかないピークやトレースの薄い広がった地形、尾根の下りや沢の遡行など、読図をしていても思考のバイアスが影響し思い込みで進んでしまうことでも起きます。
はじめてのルートでは、普段よりもさらに細心の注意を払って現在地を確認し続けましょう。
1.現在地を確認するための正置(ノースアップ)
正置には2種類の方法があり、目の前の風景(地形)と地形図を一致させることをいいます。正置は現在地で正確に行う必要がありますが、特にスタート地点では行う正置を便宜上「北合わせ」の正置(ノースアップ)と呼んでいます。この作業は、スタート地点で1回行うのみです。
【正置方法】
- まず、コンパスの回転リングを目盛りの「N」に合わせます。
- 地形図の磁北線に、コンパスの長辺または縦線をあてたまま、地形図を動かし回転矢印と磁針の赤が重なるようにします。
- これで正確に、風景(地形)の北と地形図の北が一致します。
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例では長峰霊園の駐車場で正置(ノースアップ)しました。正置後の目の前に広がる地形は、北西側手前に山寺尾根、北にハチノス谷西尾根から長峰山への支尾根、東に長峰霊園がきちんと一致しています。
2.進行方向を決定するための正置(ヘディングアップ)
スタート地点での正置(ノースアップ)が終われば、登山中はカーナビの地図ように現在地が下で、進行方向が常に上にくるよう地図をクルクル回転させて持ちます。これを「現物合わせ」の正置(ヘディングアップ)と呼んでいます。
【正置方法】
例えば、あなたが新神戸に降り立ちハーブ園へのロープウェイに乗りたいとしましょう。駅にあったガイドマップを見ると、乗り場はANAクラウンホテルの南の道沿いにあるようです。
写真は、駅から出て生田川の橋の上からの様子です。ガイドマップでは▲印の位置にいます。ノースアップのまま歩き出すと、いちいち頭の中で風景や方位を変換し続けなくてはいけません。
そこでガイドマップを回して「現物合わせ」のヘディングアップをしてみます。するとどうでしょう、実際の風景とガイドマップが一致しました。正面に生田川、右手にANAクラウンプラザが見えます。
ロープウェイの乗り場は右手方向にあるので、まずは「布引」の大きな交差点を目指します。
進んでいくと確かに布引の交差点が現れます。ここでも、現物の風景とガイドマップが一致していますね。目的地のロープウェイの乗り場には、この交差点を右折すればいいことが分かります。
交差点を右折したら、ガイドマップも進行方向に回転させます。すると、フラワーロードが大きく左に曲がっていき、正面から一方通行の道見えるのが分かります。やはり現物とガイドマップが一致しました。ここまでくれば乗り場はすぐなのが分かります。
このようにして、目の前の風景と地図を回転させて合わせる「現物合わせ」をすることで、勘違いからくる道迷いを防ぐことができます。正置(ノースアップ)の後、目的地までに必要な情報は、現在地からの進む距離と進行方向(右折・左折)だけで方角はあまり必要ないのです。
ノースアップとヘディングアップ、それぞれの長所と短所
●ノーズアップの長所
- 目標地点から自分の位置がどの方角にいるのがが分かりやすい
- 地図を北側を上固定するのでクルクル地図を回す煩雑さが無い
●ノーズアップの短所
- 常に周囲の地形の変化を把握し続ける必要がある
- 進む方角を頭の中で一旦変換し地図上のルートに落とし込む必要がある
地図読みに自信があるかたは「地図は常に北を上に持て」といいがち。理由は進んでいる方角が分からなくなるから。ただ、実際のルートファインディングをしながらの山行では、分岐を右折なのか左折なのかといった方向が重要なので、スタート地点での正置後は、方角を知ること自体あまり必要ありません。
●ヘディングアップの長所
- 目的地までに必要なのは進む距離と進行方向の把握だけ
- 地図と進む方向の景色が一致するので、現在地をロストしづらい
●ヘディングアップの短所
- 行動中は地図を常にクルクルと回し続ける必要がある
- 今いる山域で、目標地点がどのあたりにあるのか関係性が分かりづらい
ヘディングアップでの行動は道迷いを防ぐ反面、道ばかりを見て山全体を見なくなります。休憩などで現在地が分かる地点ではノースアップの正置を行い、山域全体を把握する癖をつけるといいでしょう。そうすることで、ルートファインディングの精度が上がっていきます。
3.道の変化や周辺の景色から現在地を知る
準備中
4.山座同定
準備中
山座同定は「現在地が分かっている」ことが前提です。現在地から見える山の山名を知るには、コンパスを使って「5.コンパスは3ステップでつかえる」の逆手順で行うことで可能となります。
5.クロスベアリング
準備中
山座同定と似ていますが、本来ならあってはならない事ですがこちらは現在地が分からない場合に使います。そして、クロスベアリングを行うためには、目標物(例えば、有名なピークであったり山小屋やホテル、鉄塔などの構造物)が分かっている必要が有ります。
また、見通しが良くないと使えないため、森の中や夏場の樹木が茂った所では使えません。そして、一般的なコンパスでは誤差が大きいため、現在地も大体この辺りといったレベルしか分かりません。もし正確に現在地を割り出したいのであれば、mil(ミル)目盛りのついたレンザティックコンパスが必要となります。