苔のルンゼ景観再生1

木ノ袋谷の奥深くにある苔のルンゼ

~2年前の台風で破壊された「苔のルンゼ」の景観再生作業を行う~

2021年10月3日

春先から「夏の暑さが落ち着いたら苔のルンゼの景観再生を行いましょう」と、nagaminedaiskiさん(以降Nさん)と計画してきた案件を今回実行することになった。

木ノ袋谷は陰鬱で険しいため、バリルート好きでも好んで入る人は少ない。また、大滝を巻いて上流にたどり着くにはそれなりに大変なルートを通る必要がある。その大滝の奥にある苔のルンゼを整備するのだから、ある意味究極の自己満足と言えるだろう。

今回Nさんから、第四堰堤から大滝上流のチョックストーンまでを一気に巻いていける右岸ルートを案内して頂けるとのことだったので、これも大いに期待していた。途中かなりシビアな箇所もあったが、大滝横の壁を登ることを思えばはるかにましだ。そのうえ、大幅な時間短縮が出来るのは今後の探索には好都合だ。

作業自体は思ったより難儀をしたが、90%は終えることが出来たと思う。最後、V字状のルンゼに嵌入した根っこの除去が出来たかったのが心残りだ。次回はプーリーシステムを駆使して処理できればと考えている。


杣谷道登山口から、ほぼ1時間で木ノ袋谷取付きに到着。今日はNさん共に装備が重いので、ここからヘルメットを着用し安全に努める。

ロッコペリが持ってきたバール(3kg)をNさんと交代しながら運んできたが、ここから苔のルンゼまでの難路では余計に危険な代物になりかねない。Nさんが急斜面でのピックアップ用にロープをあらかじめ用意してくれていた。

行きは、Ⅾ1以外は右岸を進んで行く。核心部のⅮ4と木ノ袋大滝&チョックストーンの巻き道は、急峻な尾根の斜面をよじ登り、その後転進しトラバース気味に斜上していく。

Ⅾ1、Ⅾ2は問題なく通過し、続くⅮ3は右岸の急斜面を巻いていく。Ⅾ3は両袖天端とも高さがあり飛び降りるには勇気がいる。ロッコペリは体重があるので、膝か足首を故障するだろう。

身軽なNさんが、予め防腐処理を施した丸太を側壁の水抜き穴に差し込んでステップを作ってくれた。これで、安全に降り立つことができる。左岸は、朽ちたロープと自転車のタイヤがぶら下がっているが、現在堰堤内は泥沼化しているので右岸から降りるのが賢明と思う。

第四堰堤からの右岸髙巻き&トラバースはNさんが先行し、バールをロープにくくって引き上げながらの登攀となった。

トラバースも、足場の斜面が軟弱でしばらくは緊張の脚運びを強いられるが、大滝とチョックストーンを一気に巻けるので大幅な時間短縮ができる。

巻いて降り立ったところが「苔のルンゼ」のすぐ横。本来ならこの写真のように、一本の水流の両脇にとても美しい風景が広がっている素敵なルンゼ。深呼吸をすると、肺の中まで緑に染まりそうな感じの秘境だ。

ところが、2年前の台風の影響で見るも無残な光景になってしまった。累々と倒木が積み重なり、ルンゼは土石と朽ち木で埋まっている。この景観再生作業を、これから行うのだから気合が入る。

今回、ロッコペリが5月に苔のルンゼを訪れた時よりもずいぶんスッキリとした印象だった。それもそのはず、Nさんが新ルートを開拓しながらコツコツを時間を見てはルンゼ再生作業を行っていたのだ。

今回の打ち合わせのなかで、整備試案を出させていただいた。一番の懸案は②のチョックストーンをいかに安全に河原に落とすかである。次いで⑤の巨大な根っこの処理となる。

撤去に有効な方法として担ぎ上げた重いバールなので、おおいに活躍させたいところだ。

まずはチョックストーンを観察してみる。①のつっかえ棒と思っていた倒木はほとんど効いていないのが分かる。噛みこんでいるS字状の倒木は、③チョックストーン上面すぐの部分を切断し、知恵の輪のように回転させれば撤去できると判断した。

まず①の倒木を撤去し河原に引きずっていく。真っ白なキノコがびっしり生えていて、ヌルヌルとして持ちにくかった。

③の倒木を分割しチョックストーンとの分離に成功。倒木が抜けた分チョックストーンの位置が下がり、ルンゼに嵌合した状態に。

足場は不安定なうえ崩落に巻き込まれないよう、安全に作業を進めていく。少しずつ確実に・・。持ってきたバールが役に立ってよかった。人力では到底動かすことはできないくらいのチョックストーンだったが、無事に河原に降ろすことができた。

その間、Nさんは最上部の巨大な根っこと格闘を続けている。ロッコペリもルンゼに堆積したこまごましたものを撤去しつつ根っこに向かう。

側根を切り離し、軽トラ一杯分はある土砂を取り除いていくと下側が回転を始め先が見えたかと思ったが、先端がルンゼに刺さりつっかえ棒状態に。つっかえ棒を切断すると根っこが下がる→更に側根を切断、土砂を掻き出す・・・なにやら無限ループに入ってしまったようだ。

無限ループと格闘すること2時間半、とうとう下山の時間がきてしまった。根っこは4点でルンゼに嵌合してしまったようだ。時間切れでラスボスを処理できなかったのは悔しいが、安全に下山するためには仕方がない。

上部に堆積した土砂は、今後の雨で河原まで流れていくだろう。Nさんと、次回は滑車をつかったクレーン作業の目論見を立てつつ下山の準備をする。来年の梅雨時期には、緑の苔で覆われたルンゼが復活していることを期待したい。

疲労した状態でピストン下山は危険と判断し、尾根を回り込んでⅮ5の左岸まき道より安全に下ることにした。

ところが、楽に下れるはずのⅮ5左岸の巻き道が崩落により無くなっていた。眼下には、おびただしい倒木が谷を埋めているし、引きちぎられたトラロープが無残だ。

惨状を見たNさんがクライムダウンは危険と判断、すかさずロープで立ち木にバックアップを取ってくれたおかげで安全に下ることが出来た。

ここから杣谷出会いまで40分の行程、堰堤巻き道の激下りは更に危険になるので、今一度気持ちを引き締めていく。

後で気づくと木ノ袋大滝すら撮る余裕もなかったようで、これ以降の写真はお互いに一枚も撮っていない。無事に下山はしたものの、ザックもドロドロ、体も汗だく泥まみれになった状態ではどこかに寄るわけにもいかず、護国神社まで下っての解散となった。

最後に、新ルートを案内頂いたうえに、苔のルンゼの景観再生作業をNさんと携われたことに感謝申し上げたい。

合計距離: 4.47 km
最高点の標高: 531 m
最低点の標高: 166 m
累積標高(上り): 467 m
累積標高(下り): -453 m
総所要時間: 07:54:21
Download file: 20211003_苔のルンゼ.gpx

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